SmartHRのユニコーン化に関する考察

スモールビジネス研究

こんにちは、スモールビジネスを研究する武田です。

今回はスタートアップ業界の大ニュースであるSmartHRのユニコーン化についての考察とややスモールビジネスから遠いトピックです。

ちなみに私はSmartHRやこの業界のインサイダーではないので外部からの観測結果からの考察となります。

何故大きなニュースなのか

普段はスモールビジネスを研究し、スタートアップの調達に関するニュースに対しリアクションは取ってきませんでしたが今回のニュースは以下の点で感銘を受けました。

若い会社が強い根拠のあるユニコーン化を果たした

今までのユニコーンと呼ばれる会社は上場まで果たす会社もありますが、強い根拠・蓋然性のないユニコーンが数多く存在し業界内部では投資をした側が間抜けだったと笑いのネタとされている企業が多く存在します。過去のネクストユニコーン記事を見ればその後どうなったかは見えるでしょう。

それらの会社とは異なり成長率・ARR・大きな市場規模を背景とした資金調達を実現したことに感銘を受けました。

高い成長可能性

力技で小さな市場規模、スケーラブルではないビジネスモデルでKPIを急成長させている企業は今までもありましたが、そういった企業は上場後失速し営業利益率の急落、M&Aのみによる成長追求ともがく宿命にあります。

それとは異なりSmartHRの場合はグローバルの市場を考えれば大きなポテンシャルがある市場の開拓を進めている段階で今後も高い成長性を期待することが出来ます。

Light Street Capitalのコメントで以下のように語られており当然グローバル市場を目指しているものと考えます

*” it’s already revered in Japan, and we expect will soon be renowned globally.”

シリコンバレー投資家からの大型調達

今回のリード投資家はLight Street Capitalです。日本のスタートアップに対してもシリコンバレーのVCから投資に値する会社が生まれたということです。

彼らから見て小粒のマザーズ銘柄は相手にする価値がありません、より大きなポテンシャルを持っておりグローバルSaaS会社になる可能性を認められたということです。

また、これはシリコンバレー投資家からの調達に限定されませんがfreeeやマネーフォワードの成功によりSaaSのKPIを評価することによる大型調達が可能になるような調達環境が整備されたことも大型調達成功の要因と言えるでしょう。

何故人事労務領域だったのか

バックオフィスSaaSはラクス(経費精算、メール管理)、マネーフォワード(会計)、freee会計を産んできました。バックオフィスSaaS化の波は他領域にも押し寄せていますが何故今人事労務領域だったのか考えてみるとマイナンバー、電子申請と制度の変更により新たな手続きが必要となったことがこの市場を押し上げている要因の1つであると考えます。

今後もマイナンバー周辺には変化が多く予定されており機会が引き続き見込める市場でしょう。

ビジネスを考えるにあたり、こういった外部環境変化によりその市場が押し上げられているのか、今後も押し上げられ続けるのかという観点は欠かせない分析です。

熾烈な競争環境

SmartHRが目指しているのは(短期的に)、バックオフィス人事労務領域のソフトウェアを用いた効率化かと思います。

はて、これは極わずかな人しか気付かない見えづらい機会でしょうか。

勿論そうではありません、多くの人から見て市場機会がある領域であり競争環境も熾烈です。スケーラブルな市場があるソフトウェアビジネスでは必ず競争環境は熾烈になります。周辺ツール(会計、ワークフローなど)が人事領域への進出、SmartHRの成長を知った会社の新規参入など多くの脅威にさらされます。

人事労務ソフトウェア領域で取りうるオプション

ここで参入した企業が取りうる3つのオプションを考えましょう。

まずはSmartHRが取っているオプション、No1シェアとして駆け抜けることです。多数の競合に晒されますがそこに対して他社を圧倒する資源を投下し競合をパワープレイで殴り倒す戦略です。No1シェアを獲得し機能を他社よりも拡充し価格を下げることで他社をキックアウトすることが出来ます。

Paypayなどもそうですが、他社よりも多く人と金を投下する。これで勝ち抜けると最も高いリターンを期待することが出来ます。

2と3はNo1のプレイヤーに勝ち目がないと考えたプレイヤーが取るべき戦略です。

2は他のツール連動性で守り抜くこと。確かに人事労務だけの機能を取り出したらSmartHRの方が優れていると言えるが周辺ツールと統合していることにより全体としてはメリットが出るため既に導入しているツールの周辺機能で十分と考える会社を相手にすること。

この会社はSmartHRに対して大負けしなければ一定の市場を守り抜くことが可能です。

3は特殊業態のみを相手にすることです。SmartHRは最大セグメントに対して製品開発を行うため特殊な業態に対する機能開発・サービス提供の優先度を下げます。そこを発見し先行してインストールベースを獲得する戦略です。

SaaSビジネスは基本的に資金調達ガソリンバトル

今回SmartHRはユニコーンとなりましたが逆の見方をすれば大きな市場があるSaaSビジネスを行う場合は基本的に金と金のぶつけ合いになるためユニコーンにならざるを得ななかったとも言えます。

次のSmartHRを目指したいならば他社よりも多くのガソリンを可能な限り早く調達し投入し続ける戦いであることは認識しておいた方がよいでしょう。

当然ですが金がある会社は強いです。

スモールビジネスへの学び

さて、このニュースからスモールビジネスオーナーを目指す皆さんは何を学べばよいでしょうか。

SmartHRのような会社とは戦うな

まず逃げることを推奨します。このような会社が誕生する宿命にある領域を戦略的に回避することで戦いを避けることが出来ます。多少先行して売上を作っても瞬間的に踏み潰されるという流れは決済周辺領域などで多く見られましたがガソリンファイトをする気がないならやめておきましょう。

別の記事でどのような市場がガソリンファイト市場かは述べようと思いますが

・分かりやすいニーズ

・分かりやすい解決策

・大きな市場

・非属人化を期待出来るビジネスモデル

このあたりはやめておいた方がよいです。

スモールビジネスが対象とする市場はこの逆です。

・玄人にしか分からないニーズ

・分かりづらい解決策(SaaS一発などではない)

・小さな市場

・属人的なビジネスモデル

これを選びましょう。

SmartHRと同じ戦い方をしない

残念ながら、上の特性を持ち踏み潰される危険性が高い市場にあなたがいたとしましょう。でも大丈夫、小さな市場に閉じこもりましょう。マニアック過ぎてSmartHRの立場から考えると切り開くことが合理的ではないややこしい市場を発見しましょう。

シェア100%のユニコーンはいません、必ずあります。

ユニコーンを目指すか、スモールビジネスを目指すかは早めに意思決定し適切な戦略を

結びです。

市場選択も戦略もどの程度のスケールを目指すかによって全てが異なります。

スモールビジネスを目指す人はガソリンファイトを避け、うまい戦いをしましょう。

適切な戦い方を知っていればユニコーンにはなれなくても連戦連勝出来ます。

それでは今日もエクセレントスモールビジネスの確立に向けて取組んでいきましょう!

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