武田です。
プロダクトマーケットフィット、よく聞く言葉ですね。
この言葉、定義が曖昧で役に立てるどころか混乱してしまっている人が多く見受けられます。そこで今回は
・PMFとは何か?
・スケーラブルにするにはどうするべきか、逆にスケールさせないほうがよい(スモールビジネスであるべき)ケースはどう定義されるか?
これを解説致します。
PMFとは何か
・定義1.対象がサービスを導入・利用する際の負荷よりも利用する便益が十分上回っている
・定義2.上が再現可能である
私は上の2つの定義で捉え事業方針を判断しています。
負荷と便益のバランス
負荷とは何か?
導入する際のコスト、学習の手間、利用の手間、利用している事により発生する恥など全ての合計です。
誤りがちなのが目に見えるコスト(金)だけをみてしまうケース。
若手にありがちなのがFAXを利用している業界を見て「全てをクラウドにしましょう!」というような稚拙な発想。あまり見ませんが微笑ましくなりますね。
幼稚な発想を卒業しなさい!可視化による価値など微細なことを知りなさい!
負荷とは何か
FAXを利用しているのはFAXが少なくとも現在の状況において最適だからです。その会社にクラウドにしましょう(笑)!ということで負荷としては何が発生するでしょうか。
想定しうる負荷:
・導入初期費用および月額
・クラウドサービス利用環境(ガラケーのケースもある)
・社員およびアルバイトへの教育
・導入に際して発生するトラブル対応
・関係各社への説明とコミュニケーションの切り替え
・アナログ顧客を捨てることによる売上減少
・従来方法と平行して利用する手間
この時点で利用したくないですね。
負荷はあらゆるものを想定しなさい!対象の行動の裏側にある背景まで把握しなさい!
便益とは何か
一番頭悪い便益は手間の削減・コスト削減です。
上のケースであれば
・FAXからクラウドに切り替えることによって外出先でも確認可能・データ整理が容易になる(FAXのデータをエクセル等に打ち込んでいる場合はその工数が削減)
・IT化に取り組んでいるというIR対策・マウンティング・安心
上のようなことを考えますね。直接的な工数削減だけでなくとりあえず取り組んでいると言える、等のメリットを見逃さないようにしましょう。昔はAI、最近だとDXです。
このように対象が受けることが出来る便益を対象の心情を深く理解し把握します。
例えばタピオカで得ることが出来る便益は味・食感やカロリーのみならずインスタ投稿のネタ、コミュニティ内に存在し続ける正当性を与える等ですね。
消費者の感情、法人内に存在する担当者・経営者・上長の心情とインセンティブを深く理解しなさい!!
上で法人内に存在する各人を別に記述したのは担当者と経営者はインセンティブが異なるからです。例えば担当者に自分の業務を自動化する提案をしてはならないのです、自分がやっている業務が即座に自動化されてしまう程度のものであったと自ら証明してしまうからです。
経営者は逆です。可能な限り少ない人数で事業を運営したいと考えているはずです。
立場によるインセンティブの違いを把握しなさい!
図解:PMF
概念的に図示してみましょう。負荷と便益は上で挙げたようなあらゆるものを含みます。間違っても直接的な費用・工数だけを見てはなりません、それは小学生が考える程度の分析です。
クラウド化による工数削減発想から卒業しなさい!!可視化をやめなさい!!
端的に言えば上の導入効果が十分に差分があればPMFと言えます。PMFに至っていないケースは十分な差分がない場合です。ここまでは簡単ですね。定義1の話でした。
定義2.再現可能性
さて、ここからが定義2.再現可能性です。
起業初心者はプロダクトが少し売れると舞い上がってしまい資金調達!ユニコォーーーン!!となってしまうのですが待ってください。そのPMF、再現可能性はありますか?
この再現可能性を確保することこそが経営なのです。
1人でやっていたことを100人でも出来るようになりなさい!!
ここで再現可能性を阻む敵を見ていきましょう。
属人性
例えばコンサルティング、飲食等属人性が高い場合は再現可能性が事業の成否を決定する全てと言えます。導入負荷・便益が提供する人によって大きくブレるため再現可能性が低いです。
このような事業領域でマニュアライズ・システムにより再現可能性を実現することが出来ると牛角やマクドナルドのように大きくなります。
逆にスモールビジネスは高属人性ビジネスをするべきです。規模の勝負で負けないからです。逆に属人性を最大限に活かすことこそが競争戦略となります。
「それって属人性高くてスケーラブルじゃないよね?」というのは批判ではなく称賛です。競合他社にも同じことが言えるので強い人が運営することこそ最大の競争戦略となるのです。
NARISAWA(*アジアトップレストラン常連店舗)を作りなさい!
顧客セグメント:スケーラビリティの罠
PMFとは簡略化した概念です。顧客によって負荷も便益も異なってしまうのです。
例えば上のクラウド化の例で「・クラウドサービス利用環境(ガラケーのケースもある)」を挙げましたがすでに多くのクラウドサービスを利用している会社とそうでない会社でこの負荷が存在するか否かが異なることが分かりますね。
つまり顧客セグメント(この場合はクラウドサービス導入状況)によって負荷が異なるのです。便益についても同じです。
オッサンがタピオカを飲んでも気持ち悪いとしか思われませんがJKが飲んでインスタに挙げればカワイイと称賛されるのです。このように顧客セグメントによって便益も異なるのです。
もっと詳細に行くと事業立ち上げ当初は紹介をたどっていくケースが多いと思いますがここで導入が進んだからと言って喜んではなりません。
「知人から買う」と「知らない人から買う」では導入の心理的ハードル、つまり負荷が異なるのです。
PMFとは特定セグメント限定的に成立する微妙なバランスなのです。
このセグメントから大きくはみ出すとPMFから外れます。
スタートアップでよく見られるケースは特定セグメントでしか成立しなビジネスをスケーラブルと主張するためにあらゆるセグメントに訴求し、結局コストがバランスせず失敗するケースです。これがスケーラビリティの罠です。
特定セグメントに引きこもって安全にビジネスを運営しなさい!!!
スケールを追求することはサービス品質低下にも繋がります。様々なセグメントの最大公約数を目指すため特定セグメントにとっては優先度が下げられてしまうのです。
例えば外資系コンサルティング・投資銀行等トップクラスの企業を目指す学生用の就活サイトはスケールを目指すべきではないのです。不純物を混ぜてあまりよい選択肢とは必ずしも言えない企業を掲載することでしかスケールを目指せないからです。結果としてユーザーは離反しサービスの価値自体を毀損する結果となります。
スケーラビリティの罠に注意しなさい!!
スケーラビリティの罠を超えろ
さて、困りましたか?そんなこと言われても大きくなりてぇよぉ、スケールしてぇよお。特定セグメントに閉じこもりたくねぇよお。
安心しなさい。
垂直に行きなさい!
特定セグメントにおいて強烈にPMFしているならば素晴らしいことです。消費者はあなたのサービスを両手で歓迎している状態です。ここに来るとなんでも売れます。
先程「知人から買う」と「知らない人から買う」は負荷が大きく異ると書きましたがこれを逆手に行きましょう。特にBtoBのビジネスでは「知人、すでに取引がある企業から買う」負荷は新規取引先から買う負荷に比べると大きな差があります。
新たなビジネスを作りなさい!!単一事業でのスケールを諦めなさい!!
簡単なんですよ。両手を挙げて歓迎しているならあなたに多くの情報を提供するでしょう、消費者からの情報に基づいてサービス開発をすれば高い確率でヒット、少なくとも失敗はしない事業の創出は簡単です。出来ない場合はセンスなさすぎです。答えは目の前の客が教えてくれるのです。
サービスを通じて強い関係性を構築し、提供される顧客の声に敏感になりなさい!!
PMFに惑わされるな!商売をやりなさい!
以上です!
カタカナに惑わされず目の前の客に集中し安全に着実にビジネスを展開しなさい!
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