北の達人に学ぶスケールのデメリット

企業分析

武田です。今回は北の達人分析3回目

今までは北の達人が現在の事業に行き着く経緯1商品依存だった会社を変えた経緯について解説しました。今回は社員数の伸びと企業成長の関係についてです。

前回までに引き続き新規上場時の有価証券報告書(1の部)を読み解いて行きましょう。

https://www.jpx.co.jp/files/tse/listing/new/b7gje6000004z6il-att/11Kitanotatsujin-1s.pdf

「北の達人」の社員数と業績

まずこちらの図を見て下さい。

こちらは北の達人の社員数と売上の推移を示したものです。

5年間で売上は3倍弱と成長しておりますが、従業員数(臨時雇用者含む)は24人から38人と2倍未満です。

フルタイムは13人から19人と5年間です。

売上高が110億円伸びる間にフルタイムは6名の増加というのはインパクトの強い数字ではないでしょうか。

社員数が一気に増える弊害

北の達人の場合、もちろん社員数を大きく増加させることが出来ているのはメーカー型ECという社員数に依存性が低いビジネスモデルが支えていることは言うまでもありませんがビジネスモデルによらず、フルタイムメンバーを増加させることは慎重になるべきです。可能な限りしない方がよい、と言ってもよいでしょう。

私も以前は会社始めたばかりのときには社員数を増やして急成長と言いたい!集合写真を撮りたいという歪んだ欲求に蝕まれたときはありました。

社員数を一気に増やす悪影響についてご説明します。

価値観の多様化が急激に進む

30名くらいまでは自分の周囲から昔の仲間を集めていけば価値観を共有した仲間を集めることが出来ます。価値観を元から共有しているため事業さえ順調であればここまでの間は組織的な課題を持つことは少ないのではないでしょうか。

ただ50名を超えた段階になってくるとそうも行きません。様々な価値観・働き方を受け入れることが出来る組織にする必要が出てきます。もちろんこの組織の変革は大きくなっていく過程ではよいことと捉えることは出来ますが一体感は急激に低下します。

様々な価値観を許容するために制度を整備・変更するためのコストも急増します。

コミュニケーションコストの爆発的増加

価値観の多様化はコミュニケーションコストの爆発的な増加を引き起こします。

価値観が一致していれば1対1面談や丁寧なモチベート、マイクロマネジメントの必要性は低いのですがそうとは言えないメンバーが急激に増大するとマネジメント・コミュニケーションに関わるコストは急激に増大します。

関係構築のために食事を一緒にするなどもしなければならないかもしれません。

一人あたりへの分配低下

経営の観点からすると社員の増加と業績に対する影響が分かればコミュニケーションコストの増加とリスクを受け入れ急増させるという判断は妥当な判断の1つではありますが、社員側からするとマイナスの影響も出ます。

基本的に新規に入社する人は100人目の社員として入ってもSOのような旨味は皆無でしょう。意味のある額(2,000万円以上~)を得ることを期待するならせいぜい10人目くらいで入社しないと例外的な成功ケースを除き、経済的な旨味はほぼありません。

また元からいた社員からすれば投資期間の長期化を意味します。皆さんの給与増加よりも社員数を増やし株価を向上を狙った判断となります。幹部メンバーのみは株価向上いによるメリットを受けることが出来るので株価向上は嬉しいでしょうが、そうでないメンバーの昇給は後回しになったことを意味します。

経営陣を除き、現在いる方も今後入社する方もメンバーの急増はあまり嬉しい判断とは言えないでしょう。

スモールビジネスかスケールするかは決断しなさい!

上では社員数を増やすデメリットについて説明しました。

社員数を増やすことで売上向上効果は見込むことが出来るが想像以上にデメリットが多いことはある程度実感頂けるのではないでしょうか。

それではユニクロやソフトバンクのように大企業を作ることは誤りなのでしょうか。

もちろんそうではありません。こちらの図を見て下さい。

利益率は1人でやっているときが一番高い、間接的に必要な経費もありません。

スタープレイヤー10人くらいまでの間までもとても儲かります。

それは企業というより組合。マネジメントなど不要です。

そこから組織を拡大しようとするとスタープレイヤーだけというわけにはいきません。

バックオフィスが出来、アシスタントが増え、未熟な弟子も増え利益率は一気に低下する。この中途半端な位置で止まる可能性が高いベンチャーは最初からスケールを捨てた方が問題を抱えず、利益も格段に儲かります。

スケールしてよいのは大型の組織を作るに値する市場と戦略がある場合だけです。同時期に起業した会社よりも売上を大きくしたい、社員数を多くしたい、そういった歪んだ欲求が会社を苦しめます。

社員数の増加という経営判断自体が誤っていたのにこれを「組織的課題」と捕らえてしまう経営者も多いです。実際は「スケールさせるべきでない組織をスケールさせてしまったこと」が誤りだったのです。

そしてスケールさせるべき事業というのは実はかなり少ない。10人以下のスタープレイヤーのみで稼ぐ方が向いている事業は本当に多いのです。

社員数を増やすのはやめなさい、冷静に事業の可能性を見極めて10人以下で経営しなさい。

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