企業分析: 北の達人 part2 2012年のポートフォリオ変革

企業分析

武田です。

多くのWEBマーケター、EC事業者が注目する木下社長率いる北の達人コーポレーション、今回は新規上場時に提出される「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅰの部) https://www.jpx.co.jp/files/tse/listing/new/b7gje6000004z6il-att/11Kitanotatsujin-1s.pdf を使って北の達人の特徴を詳細に見ていきます。

前回は北の達人が北海道物産ECサイトから現在の健康食品・美容事業に至るまでの背景を見ていきました。今回は財務データなどから見る北の達人特徴を見ていきます。

前回記事

何故現在のIR資料ではなく2014年と6年前の資料を使うかというとこの時代の北の達人は組織として比較的小さく、スモールビジネスを目指す方々の参考になると考えたからです。

それでは見ていきましょう。

2012-2013:急成長の始まり・ポートフォリオの分散

さて、こちらは売上高と経常利益推移です。気になるのは

・2012-2013年の間に変曲点があり急成長が始まっている

・2010-2011年には売上高は増加しているが経常利益は減っている

何があったのでしょうか。

製品ポートフォリオの変化

主力製品である「カイテキオリゴ」の発売時期は2006年でありこの商品の発売が原因ではないですね。ここでカイテキオリゴ売上依存率を見てみましょう。

2012-2013年には上昇傾向にあったカイテキオリゴ売上依存率が減少傾向に転じていることが分かります。その後の2013-2014年も低下しピークの85%から55%まで3年で下落しました。

推定ですが、2012年にはほぼカイテキオリゴ株式会社と言っても過言ではない状況に危機感を覚えたのではないでしょうか。ツイッターでの発言を見ると木下社長は経営の持続性には強く注意し経営をしています。単一商品に売上が集中している状況は安定とは逆の状態にあるためポートフォリオの分散を図ったものと推定されます。

沿革を見ると2009年には紅珠漢を発売(サプリ)、2011年にはカイテキスクラブ(現在みんなの肌潤糖)およびカイテキどかスリム茶のサイトを開設。その後も商品を多数発売しており2006年発売のカイテキオリゴ以降の仕込みを2009-2013年には集中的に行っていることが分かります。

この成果が身を結んだのが2013年ということではないでしょうか。

2016年(上場年度)の在庫状況を見てみるとポートフォリオが見事に分散していることが分かります。

・一点突破に全てを賭けず常に危機感を持ちなさい!

・売上成長が順調だからといって慢心せず次の仕込みを数年先を見越して行いなさい!

急成長する事業は逆に見ると消費者が移り気で急減しやすい事業とも言えるのです。

急成長に慢心するのはやめて常に自分を取って代わってしまう潜在的な競合の存在に注意しなさい!

変化への投資

2010-2011年の間、増収・減益が発生しています。この期間の損益計算書は公開されていないのですが手に入る情報から原因を推定してみましょう。

既知の事実

・カイテキオリゴ売上依存率は上昇

・売上高は上昇

原因の推定

原材料費高騰?:この状況でカイテキオリゴの原価が上がる要因は原材料費単価の高騰しかなくそれは原材料市場に大きな変化がある以外考えづらく、また通常売上高が上がればサプライヤーに対してボリュームディスカウント交渉が可能であるためやはり原材料費高騰は考えづらいです。

広告単価の上昇?:競争激化により広告単価向上は発生した可能性はありますが、そうであれば利益成長率がそのケースであれば継続的に利益を成長させ続けることが難しい市場環境と言えるのですが、2011年以降の業績を見るとその影響は限定的と考えられます。

新商品開発の投資?断言は出来ませんが、その後多数の製品を発売していることを考えると新商品開発に向けた投資が大きかったのではないかと推定されます。

リスクをマネージメントしながらポートフォリオ変革

一時期は売上依存率85%あったカイテキオリゴ、その依存率を3年で55%まで下げるというのは会社の大変革という事が出来て赤字の期間をくぐり抜け達成する企業やポートフォリオを結局は変革出来ず衰退していく企業が多く見られます。

その難題を限定的な経常利益単年下落程度の影響で達成した経営手腕はさすがです。

ポートフォリオ変革を自社がマネジメント出来るリスクの範囲内で達成しなさい!

過去データを探し回りなさい!

企業分析をする人でやりがちなのが有価証券報告書や決算書だけで分析してしまうこと。これだけでは企業のことは全然分からないのです。

企業を分析するなら代表のツイッターやインタビュー、競合の状況、市場環境、これらを総合的に知り戦略を分析して始めて意味があるというもの。

今回は過去の分析ということでGoogleの期間指定検索をすることで2013年講演会のYoutubeを発見することが出来ました。

(株)北の達人コーポレーション 代表取締役 木下 勝寿 オープンセミナー(平成25年8月23日開催)

面白いなと思ったのが

「北海道訳ありグルメブームを自社で作ることが出来て市場は大きく盛り上がったが目立ってしまい同時に競合も増えてしまったためブーム前とブーム後で売上は変わらなかった」

新市場を作ろうとしているベンチャー企業の経営者が「競合が参入してくれた方が市場が盛り上がるからよい」と言っているのを耳にすることがあります。私はこの見方には以前から疑問に思っておりました。当然ですが競合の新規参入など歓迎するべきではないのです。

例えば薬品の原材料を独占している場合であれば市場自体が盛り上がることで自社のみが利益を受けることが出来るので市場自体を盛り上げる薬品メーカーが多数参入し市場規模が増大することは歓迎するべきです。

ただ薬品原材料の独占を崩すことを狙う直接競合の参入など歓迎するべきではありません。やはり競合は競合であり倒すべき相手でしかありません。

MicrosoftやOracleを見習い徹底的に叩くべきです。

こちらの動画は内容が盛りだくさんなのでまた次の機会に解説します。

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